~睡眠、寝るということ1~ 『分子栄養学から見た健康術②』

~睡眠、寝るということ1~ 『分子栄養学から見た健康術②』

以前に「寝る、食う、遊ぶ」が健康の基本であることをコラムでお伝えしました。
「寝る」は睡眠のことでもっとも重要です。時間だけでなく質も重要になります。シェークスピアの『マクベス』の中に「睡眠こそ、この世の饗宴における最高の主菜である」との一節があります。睡眠に取って代わる癒しは無い事を表した一節といえるでしょう。
「食う」は食生活全体を指しますが睡眠よりも優先されるものではありません。「遊ぶ」運動のことです。肉体労働の負荷とは分けて考えます。

人はなぜ眠り、なぜ夢を見、なにが脳や身体に起きているのでしょうか。
いつもとは違う睡眠の科学の目を通して健康にとって重要な基本を見ていきましょう。

睡眠とは単に脳や身体を休めるだけではなく、起きている間に蓄積したストレスや活動により生じた疲労物質を洗浄し回復をおこないます。
その健康に最も重要な睡眠は量と質で考えることができます。量とはもちろん睡眠の時間そのものです。睡眠時間は7時間程度が良いとされる時間をかけた追跡調査と分析で指摘されています。長くても短くても何らかの疾患や健康に対するリスクが上がると統計で指摘されています。
睡眠時間が7時間が良いとされる理由は、32歳から59歳までの1万8千人の調査で平均睡眠時間が7時間の人に比べて平均睡眠時間が6時間の人で23%、5時間で50%、4時間以下で73%もの人が肥満になる確率が高いと発表されています。
人の体には色々な状態を安定させようとする恒常性があります。睡眠の多い少ないは恒常性の仕組みを狂わせてしまいます。健康な人であっても睡眠の長い短いは高血圧になりやすく、血糖値のコントロールも乱れるとの報告があります。日本人の平均睡眠時間は6.5時間と短く、短い睡眠時間を自慢する良くない傾向もあることは注意すべきでしょう。統計的な睡眠時間の重要性を示す一つにしか過ぎませんが、ダイエットをしても痩せない、疲れが抜けないという人はまずは睡眠の時間や質から振り返ってはいかがでしょうか。
睡眠時間は質などで個人差生まれるため、ストレスの感じない範囲で実践するのが良いとされています。睡眠のサイクルは90分単位でこの倍数で目を覚ますのが良いとされますが、これも研究により個人差が大きく60分から110分ほどのサイクルと幅があります。このような個人差はなぜ生まれるのでしょうか?パーフェクトコーデック理論を使い推論にはなりますが順次後述します。

睡眠における質とは何でしょうか?
ヒトに限らず高等生物は睡眠によってだけ脳を休められるもので必要不可欠です。質とはこの脳と身体をいかに休めることといえるでしょう。ヒトは大きく分けて睡眠中にレム睡眠とノンレム睡眠という質的に違う睡眠の状態をルール通りに繰り返しながら朝の目覚めを迎えます。
眠りに入ると段階的に深いノンレム睡眠へ入っていきます。ノンレム睡眠は一般的に脳を休める睡眠で、昼間に酷使した大脳を冷やすなどもしています。
ノンレム睡眠後のレム睡眠では全身の筋肉は弛緩してエネルギーを節約させつつ身体を休めている状態ですが、脳は非常に活動状態にあって起きているときよりも活発に活動しています。夢を見るのもこの主にレム睡眠の時になりますが、浅いレム睡眠でも夢を見ることがあります。
余談ですが金縛りはレム睡眠の時に意識のレベルのバランスが狂い、脳は覚醒して曖昧ながら意識はあるのに身体は眠っているため動かない状態だという説もあります。
睡眠中に脳では大事な洗浄作業が行われます。
覚醒中の生活で様々なストレスを心身に受けてしまいます。代表的なのは酸化ストレスでしょうか。これは肉体的や精神的な原因があり、脳にも当然ストレスを受けてダメージを与えます。この回復には抗酸化物質が重要になります。前回取り上げたポリフェノールなどのほかにイミダペプチドはヒトが作り出す抗酸化物質に関与します。ビタミンCやビタミンEなどにも抗酸化力があります。ただし、ビタミンCやポリフェノールなどの水溶性の抗酸化物質は脳の防壁である関門を通過できないため脳での抗酸化作用はあまり期待できないため、ビタミンEやアスタキサンチンなどの動物性の脂溶性抗酸化物質が有効になります。この辺の抗酸化物質は前回のポリフェノールの回で説明もしているので参考にしてください。
今は大丈夫でも長年積み重なった睡眠不足は脳の各種細胞の回復不足を招くため老化も進めるといえるでしょう。アルツハイマー性の痴呆症の原因物質のβアミロイドは日中の活動で脳内に蓄積されますが、睡眠はそのβアミロイドを脳内から洗浄し予防する効果が注目されています。
記憶の整理もその一つです。起きている間に見たこと、聞いたことなどの五感から脳にため込まれた情報の整理整頓が行われるといわれます。情報の断捨離で、重要な情報を固定化してすぐに引き出せるように、そうでないものほど奥にしまう様な作業を睡眠中に行われます。これにより学習後の睡眠でゲームなどが上達するという研究結果もあります。

眠気とカフェインの関係。
コーヒーやお茶などに含まれるカフェインに覚醒作用があるのは一般的に知られています。人がなぜ眠くなるのかといわれれば現段階では脳が眠たいと感じるからとしか説明ができないようです。総論としてはです。
脳が眠気を感じる一因として脳や身体の活動の強さや長さにより脳内のアデノシンが増える事がわかっています。このアデノシンが増えて脳神経の受容体を埋めてしまうと眠気を感じます。いわゆる疲労感です。カフェインが脳内にあるとこのアデノシンの受容体に先回りして埋めてしまうためアデノシンが増えても受容体に取り付けないため、カフェインが脳が眠気を感じること、疲労感を感じることを邪魔します。
カフェインを飲んでも眠くなるのは眠気を誘う要因がほかにもあるためです。カフェインに対して敏感な人は効果が高いのですが、他の要因の方が強い人は効果が低いこととなります。

必要な睡眠の長さは質によって影響されると思って良いのでしょう。
質を向上させるためのアミノ酸は幾つかわかっています。そのアミノ酸もサプリメントから摂取は可能ですが、睡眠はまだまだ未解明な部分も多いためタンパク質やビタミン、ミネラルを多種の食品からとるのが良さそうです。
次回は睡眠のその他の働きや個人差がなぜ生まれるのかを分子栄養学的に話していきます。

 

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