~ビタミンの正体~ 分子栄養学から見た健康術⑥

分子栄養学から見た健康術⑥

~ビタミンの正体~

毎年1・2度は筑波実験植物園にキノコやランなどの展示会をデートを兼ねて観に出かけます。その展示会場になる建物の1階から2階に向かう階段に生物の進化の壮大な過程が壁一面にわかりやすく描かれています。私は行く度にロマンをかき立てられて足を止めてしまいます。

ビタミンとは?とネットで検索すると「生物(ヒト)の生存育成に微量に必要な栄養素のうち、その生物の体内で十分な量を合成できない炭水化物、タンパク質、脂質以外の有機化合物の総称である。…」(ウィキペディア)とあります。
ビタミンは抗酸化作用の様に体内にあることで作用するものと、細胞内で酵素の触媒として働く場合があります。この場合のビタミンは補酵素と呼ばれます。「CoエンザイムQ10」はCo=コは副になるのですが和訳で補が当てられています、エンザイム=酵素で、Q10は番号となります。補酵素キューテンが日本語での一般的な呼び名となります。酵素は体内でエネルギーであるATPやその他の物質の合成を担いますが、その合成の鍵となるのが触媒であるビタミンやミネラルになります。因みにミネラルは鉄や亜鉛、カルシウム、ナトリウムなどの無機物の総称で、これも必須となる補酵素となります。
ファンタジー作品で魔法や呪いに魔石や宝石などが触媒として登場しますが同じです。藁人形の呪いも藁で作った人型が触媒といえるでしょう。
実社会では自動車の排気ガスも触媒を通ることで有害な成分が変質して浄化されてから排出しています。人体でも有害となるアンモニアやアルコールは無害な物質に代謝されて対外に排出しますが、これにもビタミンやミネラルが触媒として働いています。
前回も取り上げたビタミンCを例にすると、ヒトに合成する酵素が無いため食品等から取り入れるしかありません。因みにヒトだけでなくサル、モルモットなど限られた生物だけがビタミンCを合成できず、イヌやネコ、マウスなどのほとんどの動物は体内で合成できるためこれらの生物にとってはビタミンでは無いことになります。
ヒトは何故大切な栄養素が合成できないかといえば進化の過程で故意か偶然か合成するための酵素の作り方をDNAから作り方を失ってしまったからです。その失った理由は事故なのか不要としたのかは推測として諸説ありますが、大事なのは出来ないなどの個人差にあるために、長くなる事もあり割愛します。

補足ですが、厳密には体内で十分ではないにせよ合成できる栄養素はビタミンとは呼ばれなくなります。当初合成できないとしてビタミンB3と呼ばれていましたが、必須アミノ酸のトリプトファンから合成されることがわかり、現在ではナイアシンと呼ばれています。ビタミンCは50種類以上の働きがあるといわれますが、このナイアシンは500種類の働きがあるといわれます。
このような働きも次回以降まとめて行きます。

DNAはそれを保有する生物の作り方が記述されていてヒトもDNAにより細胞や細胞内にある酵素などの器官の一つ一つの作り方が記述されています。
よくDNAは設計図と表現されますが実際には料理のような作り方(レシピ)の方が近いイメージになるでしょう。設計図では細かい寸法まで指定されるので出来上がる物に差は生まれませんがレシピだと「適度、適量」という指示(記述)があり、そこに個人差という個性が生まれます。
煮物などに使う人参の乱切りは人により違いがでます。若い頃、私は厨房で仕事をしていたのですが千切りは誰より早く精確だったのですが、乱切りになると迷ってしまい手が遅くなってしまうなど「適当に…」というのが大の苦手でした。他のことが人並み以上に出来たとしても何故か上手く出来ない…。これも個性なのですが、体の中の細胞レベルでもこの様な個性が存在します。
これを「パーフェクトコーディング」、日本語で「完全なる記述」となります。
あくまでDNAは記述だけなのでミスやその修正などは含まれません。このミスが原因で特定の酵素や神経などが働かないか極端に弱い場合は遺伝子由来の症状や病気となってしまうこともあります。
前回上げたビタミンCをまた例にあげます。一定量のビタミンCを摂っても人により効果の現れ方が違ってきます。50種類以上あるとされる効果に並列的に現れるのではなく直列的に順々に効果が現れます。その効果が現れる順序も人により異なり個性となります。
ダイエット法でも一つの方法が万能ではなく、人により効果の現れ方も違う事からも個人差がわかることでしょう。
ビタミンやミネラルなどが流れる水のように段階的に効果を現すことから「ビタミンカスケード理論」といいます。カスケードとは段々の滝のことをいいます。その全ての上から下への全ての段階で効果を得るために大量のビタミンを摂取することを「メガビタミン主義」といいます。まだよくわかっていないファイトケミカルなどの多くの栄養素等も関与すると考えていいでしょう。

棚田をイメージしてください。
棚田は山の斜面に水田を階段の様に多層的に作られていて、その1枚1枚が細胞と内にある酵素に、水はビタミンに例えることができます。上から水を流して水田を水で満たしていきます。当然のことながら上から順々に水田の水が入り下へと順に満たされていくため、上にある酵素である水田ほど先に満たされて機能できるようになります。ここで干ばつなどで流し込まれる水が少なければ全ての水田である酵素は機能できないことになります。また酵素を作るタンパク質の摂取が足りなければ水田も畦がひび割れるなどして水が漏れてしまうなど、機能することが出来ないこともあるでしょう。
水田の畦や水門をしっかり作った上でそこに水を満たすことにより棚田として準備が出来るのです。場所によっては日差しや土の差もお米の出来の差もあるでしょうし、病害虫が出やすい条件もあるかもしれませんね。
様々な要因で個体差が生まれます。
ヒトの体も同じで食事等からしっかりタンパク質を摂取して酵素を元気に機能させなければビタミンも摂る意味もなくなります。メガビタミン主義はしっかりとタンパク質を摂取してビタミンを余裕がでるほど大量に摂取することで、身体の細胞、神経、免疫、ホルモン生成などの各機能がしっかり働き心身が健康になる、という概念となります。

様々なダイエット法がありますが分子栄養学の基本となるタンパク質やビタミンやミネラルの摂取が不十分になる方法は継続的に成功する根拠に乏しいどころか、健康に良くない影響を及ぼす可能性があることを指摘したいと思います。
バランスの良い食事とはこの様な基本をしっかりとおさえることになります。

次回はダッセンして味覚とダイエットに触れてみたいと思います。

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